春望詞 其一
花開不同賞、花落不同悲。
欲問相思處、花開花落時。
字は洪度または宏度。長安の良家に生まれたが、父が地方官として赴任するのに伴われて、蜀(四川省成都)へゆき、そこで父を失い妓女となった。節度使韋皐(いこう)に愛され、召されて宴会で詩をつくり、女校書(じょこうしょ)と称された。
浣花渓にいて、白居易、元槇、牛僧孺、令狐楚、張籍、杜牧、劉禹錫など多くの詩人たちとと唱和し、名妓として知られた。なかでも元槇と親しかった。
彼女が作った深紅の小彩がついた詩箋(色紙のようなもの)は、当時「薛濤箋」として持てはやされた。
王羲之の書法を学んだ書家としても認められ、その一片は宋の宮廷に秘蔵されていたという。晩年は碧溪房に居住し、吟詩楼を建てた。段文昌の墓誌が残されている。
送友人
水国蒹葭夜有霜、月寒山色共蒼蒼。
誰言千里自今夕、離夢杳如関塞長。
海棠渓
春教風景駐仙霞、水面魚身総帯花。
人世不思霊卉異、競将紅纈染軽沙。
春の神様は、風と光に、谷いっぱいの花がすみを送り届けさせたもうた。 清らかな谷川の水に映る花影、泳ぐ魚はまるで花模様を帯びたかのよう。 世間では、この海棠の霊妙なわざに気がつきもせず、競って赤いしぼりを河原の砂の上に干している。
酬人雨後玩竹
南天春雨時、那鑒雪霜姿。
衆類亦云茂、虚心能自持。
多留晉賢醉、早伴舜妃悲。
晩歳君能賞、蒼蒼勁節奇。
○鑒 鑑に同じ。みきわめる。考える。 ○衆類 あらゆる植物 ○云茂 云は物の多く盛んなさま。盛んに繁る。 ○晉賢醉 中国晋代に世俗を避け竹林に集まり酒を飲み清談にふけったといわれる7人を「竹林の七賢」といった。仙人願望の始まり。 ○舜妃悲 帝王堯(ぎょう)のふたりの娘が舜の妃となっていたが 舜が死んだ巡行先に到り悲しんで泣いた涙が湘水(しょうすい)のほとりの竹に斑紋をつけたという伝説 ○晩歳 歳暮。冬になったらの意味。○勁節 強い節 節があって強く積雪などに折れないかたい節操にも掛けている
南の空から春雨(はるさめ)が落ちてくる温暖なときには、竹が冬のはげしい雪や霜にたえている強い姿は、とても想像できません。
あらゆる植物が盛んに繁ってその旺盛な活力を誇っているときに、竹だけはあの中味を空にして満たさず、なんの私心もなく、自分の生き方を守っています。
竹林は晋の賢者たちが、そのなかでこのんで酒もりをしたという風流な伝説を思い出させます。また、舜帝のふたりの妃が、帝の死を悲しんで泣いたとき、その涙の跡が湘水のほとりの竹の斑紋となったという、語り伝えもあります。
竹には、なかなか味のある話がありますが、あなたに愛していただきたいのは、年の暮れになって、ほかの植物がみなしぼんだりしているのをよそに、青々とした色を見せて雪霜のなかに強く生きている、そのような竹の姿です。いかがでしょう、そうお思いになりませんか。
柳絮(りゅうじょ)
二月楊花軽復微、春風揺蕩惹人衣。
他家本是無情物、一向南飛又北飛。