班u、


怨歌行  
新裂齊丸素,皎潔如霜雪。
裁爲合歡扇,團團似明月。
出入君懷袖,動搖微風發。
常恐秋節至,涼風奪炎熱。
棄捐篋笥中,恩情中道絶。


怨歌行
新たに 齊の 丸素を 裂けば,皎潔にして  霜雪の 如し。
裁ちて 合歡の扇と 爲せば,團團として  明月に 似たり。
君が懷袖に  出入し,動搖すれば  微風 發す。
常に恐らくは  秋節の至りて,涼風  炎熱を 奪ひ。
篋笥の中に  棄捐せられ,恩情  中道に 絶えんことを。


怨歌行
『古詩源』では『怨歌行』、『玉台新詠』で『怨詩』とする。相和歌辞・楚調曲。
同様の趣に 、
謝玄暉  『玉階怨』  「夕殿下珠簾,流螢飛復息。長夜縫羅衣,思君此何極。」(夕殿 珠簾を下し,流螢 飛び 復(また) 息(とま)る。長夜 羅衣を 縫ひ,君を思うこと 此に なんぞ 極(きわ)まらん。)
『金谷聚』 「渠碗送佳人,玉杯邀上客。車馬一東西,別後思今夕。」(渠碗(きょわん) 佳人を 送り,玉杯 上客を 邀(むか)ふ。車馬 一(ひとたび) 東西にせられ,別後 今夕を 思はん。)
李白   『怨情』    「美人捲珠簾,深坐?蛾眉。但見涙痕濕,不知心恨誰。」
美人 珠簾(しゅれん)を捲き、深く坐して蛾眉を顰(ひそ)む。但(ただ)見る 涙痕の湿(うるおえる)を、知らず 心に誰をか恨む。  
班u、 王維
怪來妝閣閉,朝下不相迎。
總向春園裏,花間笑語聲。

怪しむらくは妝閣【さうかく】の 閉づることを,朝より下りて  相ひ迎へず。
總て春園の裏に 向いて,花間 笑語の聲。

李白  紫藤樹
紫藤掛雲木、花蔓宜陽春。
密葉隠歌島、香風留美人。
客中行 
蘭陵美酒鬱金香,玉碗盛來琥珀光。
但使主人能醉客,不知何處是他ク。



班ul(はん しょうよ、生没年不詳)は中国前漢の成帝の愛人。班況の娘で、班固や班超の従祖母に当たる女性。成帝の寵愛を得たが、後に趙飛燕に愛顧を奪われ、大后を長信宮に供養することを理由に退いた。長信宮に世を避けたulは、悲しんで「怨歌行」を作る。その詩は『文選』『玉台新詠』『楽府詩集』『古詩源』などに載せられる。失寵した女性の象徴として、詩の主題にあつかわれることが多い。晋の陸機や唐の王維、王昌齢「西宮春怨・長信秋詞」などがそれである。

現代語訳と訳註
(本文) 怨詩  
新裂齊?素,皎潔如霜雪。
裁爲合歡扇,團團似明月。
出入君懷袖,動搖微風發。
常恐秋節至,涼風奪炎熱。
棄捐篋笥中,恩情中道絶。


(下し文) 怨詩
新たに 齊の ?素を 裂けば,皎潔にして  霜雪の 如し。
裁ちて 合歡の扇と 爲せば,團團として  明月に 似たり。
君が懷袖に  出入し,動搖すれば  微風 發す。
常に恐らくは  秋節の至りて,涼風  炎熱を 奪ひ。
篋笥の中に  棄捐せられ,恩情  中道に 絶えんことを。


(現代語訳)
新たらしい斉の国産の白練り絹を裂いている、それは純白、潔白で穢れない清い白さは、霜や雪のようだ。
裁断して、両面から張り合わせの扇を作っている。丸くしてまるで満月のようです。
でもいつもこころに恐れていることがあるのは秋の季節が来ることなのです。秋の清々しい風は、わが君の情熱を奪って涼しくしてしまうのです。
そうすると、屑籠の中に投げ捨てられてしまうことになります。わが君、帝王の寵愛が途中で絶えてしまうことになるのです。


(訳注)
怨歌行
『古詩源』では『怨歌行』、『玉台新詠』で『怨詩』とする。同様の趣に 、謝?の『玉階怨』「夕殿下珠簾,流螢飛復息。長夜縫羅衣,思君此何極。」や、 李白の『怨情』「美人捲珠簾,深坐?蛾眉。但見涙痕濕,不知心恨誰。」


新裂齊?素、皎潔如霜雪。
新たらしい斉の国産の白練り絹を裂いている、それは純白、潔白で穢れない清い白さは、霜や雪のよう。
・新裂 あらたに、さきやぶる。
・齊?素 斉の国に産する白い練り絹。 
・皎潔 白くて穢れなく清いさま。純潔。純白。「皎潔」を「鮮潔」ともする。
・霜雪 霜や雪のように潔白な喩え。


裁爲合歡扇、團團似明月。
裁断して、両面から張り合わせの扇を作っている。丸くしてまるで満月のようです。
・裁爲 裁断して…とする。
・合歡扇 あわせおうぎ。細い絹で作ったもので、両面から張り合わせているもの。ここでは、自分を円くて潔白な扇におきかえたい、という願いでもある。・合歡:喜びをともにする。夫婦の情交。
・團團 丸いさま。「団円」で家族や夫婦の憩いの集いをも暗示する。
・明月 清らかに澄んだ月。仲秋の月。満月。


出入君懷袖、動搖微風發。
この扇はわが君の胸ふところや袖に出たり入ったりして、搖動かすたびに、そよ風を起していくでしょう。
・出入 出たり入ったりする。 
・君懷袖 わが君の胸ふところや袖に出たり入ったりして。
・動搖 ゆりうごかす。・微風 そよ風。・發 起きる。


常恐秋節至、涼風奪炎熱。
でもいつもこころに恐れていることがあるのは秋の季節が来ることなのです。秋の清々しい風は、わが君の情熱を奪って涼しくしてしまうのです。
常恐 いつも(…を)おそれる。
・秋節至 秋の季節が来てしまうこと。
・涼風 秋の清々しい風が扇のいらない涼しい状態にする。
・奪炎熱 きびしい夏の暑さ。わが君の私に対する情熱が奪われること。


棄捐篋笥中、恩情中道絶。
そうすると、屑籠の中に投げ捨てられてしまうことになります。わが君、帝王の寵愛が途中で絶えてしまうことになるのです。
・棄捐 すてる。すてられる。 
・篋笥 はこ。小箱。竹で編んだ小箱や竹・葦で編んだ方形の籠。ここでは、屑籠のような物。
・恩情 わが君、帝王の寵愛。 
・中道絶 途中で絶える。











李白「班ul三首」
班ul三首(其一)
玉窗螢影度 玉窗螢影たり
金殿人声絶 金殿人声絶ゆ
秋夜守羅幃 秋夜羅幃を守る
孤燈耿明滅 孤燈耿として明滅

班ul三首(其二)
宮殿生秋草 宮殿に秋草は生じ
君王恩幸疏 君王の恩幸は疏なり
那堪聞鳳吹 なんぞ鳳吹聞くを堪えん
門外度金輿 門外に金輿たり

班ul三首(其三)
怪来妝閣閉 怪しむらくは妝閣の閉ずるを
朝下不相迎 朝より下りて相迎えず
総向春園裏 総て向かう春園の裏
花間笑語声 花間に笑語の声
 


班?、 王維
怪來妝閣閉,朝下不相迎。
總向春園裏,花間笑語聲。


班?、
怪しむらくは妝閣【さうかく】の 閉づることを,朝より下りて  相ひ迎へず。
總て春園の裏に 向いて,花間 笑語の聲。