答詩一首    徐淑
妾身兮不令。嬰疾兮來歸。
沈滯兮家門。歴時兮不差。
曠廢兮侍覲。情敬兮有違。
君今兮奉命。遠適兮京師。
悠悠兮離別。無因兮敘懷。
#2
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。
思君兮感結。夢想兮容輝。
君發兮引邁。去我兮日乖。
恨無兮羽翼。高飛兮相追。
長吟兮永嘆。涙下兮沾裳。





妾が身 令【よ】からず、疾に嬰【かか】りて 來りて歸る。
家門に?滯して、時を?【ふ】るを 差【い】えず。
侍覲【じきん】を曠廢【こうはい】し、情敬【じょうけい】違【たが】うあり。
君 今 命を奉じ、遠く京師に適【ゆ】く。
悠悠たる離別、懷を敘するに因【よし】無し。

#2
瞻望【せんぼう】して踴躍【ゆうやく】し、佇立【ちょりつ】して徘徊【はいかい】す。
君を思いて 感 結ばれ。容輝【ようき】を夢想す。
君 發して引邁【いんまい】し、我を去り 日に乖【そむ】く。
恨む無くは 羽翼【うよく】し、高く飛びて相い追うを。
長吟して永嘆し、?下りて裳を沾【うるお】す。

徐淑(秦嘉妻徐淑)


答詩一首 秦嘉妻徐淑 女流詩人



秦嘉 贈婦詩三首
其一
人生譬朝露,居世多屯蹇。憂艱常早至,歡會常苦?。
念當奉時役,去爾日遙遠。遣車迎子還,空往復空返。
省書情悽愴,臨食不能飯。獨坐空房中,誰與相勸勉。
長夜不能眠,伏枕獨輾轉。憂來如迴圈,匪席不可卷。
其二
皇靈無私親,為善荷天祿。傷我與爾身,少小罹煢獨。
既得結大義,歡樂苦不足。念當遠離別,思念敘款曲。
河廣無舟梁,道近隔丘陸。臨路懷惆悵,中駕正躑躅。
浮雲起高山,悲風激深谷。良馬不回鞍,輕車不轉轂。
針藥可?進,愁思難為數。貞士篤終始,恩義不可屬。

其三
肅肅僕夫征,鏘鏘揚和鈴。清晨當引邁,束帶待?鳴。
顧看空室中,?佛想姿形。一別懷萬恨,起坐為不寧。
何用敘我心,遺思致款誠。寶釵好耀首,明鏡可鑒形。
芳香去垢穢,素琴有清聲。詩人感木瓜,乃欲答瑤瓊。
愧彼贈我厚,慚此往物輕。雖知未足報,貴用敘我情。

この詩に対して徐淑が返した詩で兮をはさんだ五言の形式ではあるが雰囲気だけの五言詩である。




答詩一首    徐淑
妾身兮不令。嬰疾兮來歸。
私の体の調子はあまりよくありません。病にかかってしまったのでそちらに行きかけたのですが帰ってしま
いました。
沈滯兮家門。歴時兮不差。
家に帰ってからずっと静かに寝ておりますが、時節がたってもよくなりません。
曠廢兮侍覲。情敬兮有違。
旅先のあなたのおそばに連れ立っていたいのですがお目にかかるのさえ怠り、愛情、敬愛、礼儀にたがえて
しまいました。
君今兮奉命。遠適兮京師。
あなたは今、あらたな命令を承け賜られて、遠く京師に往かれるそうですね。
悠悠兮離別。無因兮敘懷。
はるばるとしたお別れになりそうです、暫くは私の思いをのべる方法もないのでしょうね。
#2
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。
そちらの方を眺めてはちょっとおどってみます、そして立ちどまったりしてぶらぶらしてみます。
思君兮感結。夢想兮容輝。
あなたのことを思っての感情が結ばれるよう、夢の中であなたの姿を思い浮かべてみます。
君發兮引邁。去我兮日乖。
あなたはこれから出発され、私から日ごとに離れて乖ことになります。
恨無兮羽翼。高飛兮相追。
恨めしいのは、羽がなくて高く飛べないしあなたを折って行けないことです。
長吟兮永嘆。涙下兮沾裳。
ただできるのは、この詩を長吟してこえをながくすることですが、落ちる涙で着物のすそもぐっしょりと濡
れています。



現代語訳と訳註
(本文)
答詩一首    徐淑
妾身兮不令。嬰疾兮來歸。沈滯兮家門。歴時兮不差。
曠廢兮侍覲。情敬兮有違。君今兮奉命。遠適兮京師。
悠悠兮離別。無因兮敘懷。
#2
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。思君兮感結。夢想兮容輝。
君發兮引邁。去我兮日乖。恨無兮羽翼。高飛兮相追。
長吟兮永嘆。涙下兮沾裳。


(下し文)
妾が身 令【よ】からず、疾に嬰【かか】りて 來りて歸る。
家門に沈滯して、時を歴【ふ】るを 差【い】えず。
侍覲【じきん】を曠廢【こうはい】し、情敬【じょうけい】違【たが】うあり。
君 今 命を奉じ、遠く京師に適【ゆ】く。
悠悠たる離別、懷を敘するに因【よし】無し。

#2
瞻望【せんぼう】して踴躍【ゆうやく】し、佇立【ちょりつ】して徘徊【はいかい】す。
君を思いて 感 結ばれ。容輝【ようき】を夢想す。
君 發して引邁【いんまい】し、我を去り 日に乖【そむ】く。
恨む無くは 羽翼【うよく】し、高く飛びて相い追うを。
長吟して永嘆し、涙下りて裳を沾【うるお】す。


(現代語訳)
私の体の調子はあまりよくありません。病にかかってしまったのでそちらに行きかけたのですが帰ってしま
いました。
家に帰ってからずっと静かに寝ておりますが、時節がたってもよくなりません。
旅先のあなたのおそばに連れ立っていたいのですがお目にかかるのさえ怠り、愛情、敬愛、礼儀にたがえて
しまいました。
あなたは今、あらたな命令を承け賜られて、遠く京師に往かれるそうですね。
はるばるとしたお別れになりそうです、暫くは私の思いをのべる方法もないのでしょうね。


そちらの方を眺めてはちょっとおどってみます、そして立ちどまったりしてぶらぶらしてみます。
あなたのことを思っての感情が結ばれるよう、夢の中であなたの姿を思い浮かべてみます。
あなたはこれから出発され、私から日ごとに離れて乖ことになります。
恨めしいのは、羽がなくて高く飛べないしあなたを折って行けないことです。
ただできるのは、この詩を長吟してこえをながくすることですが、落ちる涙で着物のすそもぐっしょりと濡
れています。



(訳注)
妾身兮不令。嬰疾兮來歸。
私の体の調子はあまりよくありません。病にかかってしまったのでそちらに行きかけたのですが帰ってしま
いました。
・妾身 古代女子?自己的?称。・不令 不善。ふだんの状態とは違うこと。特に、貴人の病気についてい
う。婦人病。・嬰疾 病気にかかる。・嬰生まれたばかりの子、生まれたばかりの女の子、加える、首にか
ける、繞らせる、取り囲む、(?と通じて)触れる、罪を犯す、(罌と通じて)土器、(瓔と通じて)首飾
り、(纓と通じて)冠の紐、という意味がある。

沈滯兮家門。歴時兮不差。
家に帰ってからずっと静かに寝ておりますが、時節がたってもよくなりません。
・?滯 廟熱などで動けない状態にあること。月経不順、生理痛などで動けない状態。
・家門 一門、一族。血統、系譜によって結び付けられた血縁集団のこと。ここでは自宅の門というところ
か。
・不差 変わりばえがしない。同じようなもの。

曠廢兮侍覲。情敬兮有違。
旅先のあなたのおそばに連れ立っていたいのですがお目にかかるのさえ怠り、愛情、敬愛、礼儀にたがえて
しまいました。
・曠廢 すてる。なげやりにする。おこたる。・侍覲 面会して一緒にいる。おそばに連れ立っている。・
情敬 情愛。敬愛。

君今兮奉命。遠適兮京師。
あなたは今、あらたな命令を承け賜られて、遠く京師に往かれるそうですね。
・京師 みやこ。この時は長安。

悠悠兮離別。無因兮敘懷。
はるばるとしたお別れになりそうです、暫くは私の思いをのべる方法もないのでしょうね。
・敘 しゃべる,話す叙家常世間話をする.(1) 述べる,陳述する.(2) 順序,等級を付ける?叙《旧》官吏
を評定する.(3) 序( xu )と通用.叙? xubie[動]別れの語らいをする,別れのあいさつを交わす.




#2
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。
そちらの方を眺めてはちょっとおどってみます、そして立ちどまったりしてぶらぶらしてみます。
・瞻望 遠く見渡すこと。仰ぎ見て慕う。「咨嗟」はため息をつく。高貴な人のすばらしさを敬慕しつつ、
ため息をついてうらやむ意味。
・踴躍 踊躍。喜んで、おどり上がること。とびはねること。
・佇立 〕しばらくの間立ち止まっていること。たたずむこと。ちょりゅう。


思君兮感結。夢想兮容輝。
あなたのことを思っての感情が結ばれるよう、夢の中であなたの姿を思い浮かべてみます。


君發兮引邁。去我兮日乖。
あなたはこれから出発され、私から日ごとに離れて乖ことになります。


恨無兮羽翼。高飛兮相追。
恨めしいのは、羽がなくて高く飛べないしあなたを折って行けないことです。


長吟兮永嘆。涙下兮沾裳。
ただできるのは、この詩を長吟してこえをながくすることですが、落ちる涙で着物のすそもぐっしょりと濡
れています。