卓文君


白頭吟 卓文君 <109-#1>U李白に影響を与えた詩543 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1446

○白頭吟 辛苦を共にした夫が茂陵の女を妾にしようとした多情な夫をいさめる詩。

杜甫『奉贈王中允維』
中允聲名久,如今契闊深。
共傳收萸信,不比得陳琳。
一病緑明主,三年獨此心。
窮愁應有作,試誦白頭吟。
○白頭吟 漢の司馬相如の妻卓文君が夫が妾を買おうとするのをきいて賦した「白頭吟」を引き、王維の詩が天子に対して二心なきをいうのはこれと似ている。又、飽照の「白頭吟」の「直きこと朱糸の縄の如く、清きこと玉壷の氷の如し」といい、身の清直で潔白な旨を表現する。
奉贈王中允維 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 254
『古別離』孟郊
欲別牽カ衣,カ今到何處。
不恨歸來遲,莫向臨工去。
唐宋詩203 Z孟郊(孟東野)紀頌之の漢詩ブログ 「古別離」孟郊(8)
○臨? 〔りんきょう〕司馬相如が卓文君と恋に落ちて駆け落ちを始めたところ。男を惑わす女の居る所の意で使う。臨?は、秦の時代に置かれた県名。現・四川省?耒県。 ○去 行く。去る。

卓文君
前漢時代、臨の大富豪である卓王孫の娘。司馬相如と恋に落ちて駆け落ちをする、愛情溢れる女性とされる。


白頭吟 
皚如山上雪,皎若雲間月。
聞君有兩意,故來相決絶。
今日斗酒會,明旦溝水頭。
趾跳御溝上,溝水東西流。

淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
願得一心人,白頭不相離。
竹竿何嫋嫋,魚尾何??。
男兒重意氣,何用錢刀爲。

白頭吟
皚【がい】たること山上の雪の 如く,皎【こう】たること雲間の月の 若【ごと】し。
聞く君 兩意有りと,故【ことさら】に來たりて相い決絶す。
今日斗酒の會,明旦溝水の頭【ほとり】。
御溝の上に??【しょうちょう】すれば,溝水は東西に流る。

淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ??【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。


現代語訳と訳註
(本文) 白頭吟 
皚如山上雪,皎若雲間月。
聞君有兩意,故來相決絶。
今日斗酒會,明旦溝水頭。
趾跳御溝上,溝水東西流。


(下し文)
皚【がい】たること山上の雪の 如く,皎【こう】たること雲間の月の 若【ごと】し。
聞く君 兩意有りと,故【ことさら】に來たりて相い決絶す。
今日斗酒の會,明旦溝水の頭【ほとり】。
御溝の上に趾跳【しょうちょう】すれば,溝水は東西に流る。


(現代語訳)
わたしの心はこれだけ真っ白で、山上の雪のようです、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光で、立派に貞操を守っている女なのです。
あなたが、心情を他人に遣るということが聞こえてきます。わたしはほとほと愛想が尽きたので、わざわざあなたと別れるためにやって来たのです。 
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だし、明日になれば堀端のほとりを歩くだけなのです。
お堀の畔をとぼとぼ歩くでしょう、すると掘割の水は西から東へ別れ、当たり前のように流れていくことでしょう。


(訳注)
白頭吟
この作品は『玉臺新詠』、『古樂府詩 集』卷第四十一・『相和歌辭』『古詩源』にはあるものの、それ以前にはないようだ。樂府題。「共白髪」の意。卓文君の詩とするには疑わしいものである。

 
皚如山上雪,皎若雲間月。
わたしの心はこれだけ真っ白で、山上の雪のようです、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光で、立派に貞操を守っている女なのです。
・皚如 白いさま。霜や雪の白いさま。・皚:白い。霜や雪の白さをいう。
・山上雪 山上の穢れない純白の雪。
・皎若 白いさま。月光の白いさま。・皎 白い。月光の白さを発するさま。
・雲間月 女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光である。貞操を守っている女である。


聞君有兩意,故來相決絶。
あなたが、心情を他人に遣るということが聞こえてきます。わたしはほとほと愛想が尽きたので、わざわざあなたと別れるためにやって来たのです。 
・退隠して住んでいる茂陵で、やはり茂陵に住んでいる女性を妾としたことを指す。 
・聞 耳に入る。聞こえる。…噂がある。風聞がある。
・有兩意:ふたごころ。二心。浮気心でなく本気で心をやっていること。ここでは、思いを他に遣るという表現であろうか。
・故:わざと。ことさらに。ゆゑ。わけ。普通でない事柄。
・決絶 愛想が尽きて永久の別れをする。


今日斗酒會,明旦溝水頭。
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だし、明日になれば堀端のほとりを歩くだけなのです。
・斗酒 わずかな酒。・斗 ます。少しばかりの量。 
・會 あつまる。よりあう。しる。とき。おり。しお。さかもり。訣別の宴の意。『古詩十九首之四』に「今日良宴會,歡樂難具陳。彈箏奮逸響,新聲妙入~。令コ唱高言,識曲聽其真。」とある。
古詩十九首之四 (4) 漢詩<91>U李白に影響を与えた詩523 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1386
・溝水頭 堀端のほとりを歩くという意。・溝水:都市の中の堀。・頭:ところ。畔。


趾跳御溝上,溝水東西流。
お堀の畔をとぼとぼ歩くでしょう、すると掘割の水は西から東へ別れ、当たり前のように流れていくことでしょう。
・?? 行く。しょんぼりとして行くさま。 
・御溝 宮殿の周囲の掘り割り。
・上 ほとり。そば。ところ。
・東西流 東と西に別れて流れゆこうということと別れたことがあたりまえのこととしてながれさっていく、「東流」という意味が重なって別れを強調する。










白頭吟 卓文君 <109-#2>U李白に影響を与えた詩544 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1449


白頭吟 
皚如山上雪,皎若雲間月。
聞君有兩意,故來相決絶。
今日斗酒會,明旦溝水頭。
趾跳御溝上,溝水東西流。
わたしの心はこれだけ真っ白で、山上の雪のようです、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光で、立派に貞操を守っている女なのです。
あなたが、心情を他人に遣るということが聞こえてきます。わたしはほとほと愛想が尽きたので、わざわざあなたと別れるためにやって来たのです。 
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だし、明日になれば堀端のほとりを歩くだけなのです。
お堀の畔をとぼとぼ歩くでしょう、すると掘割の水は西から東へ別れ、当たり前のように流れていくことでしょう。

淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
願得一心人,白頭不相離。
竹竿何嫋嫋,魚尾何??。
男兒重意氣,何用錢刀爲。
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。

白頭吟
皚【がい】たること山上の雪の 如く,皎【こう】たること雲間の月の 若【ごと】し。
聞く君 兩意有りと,故【ことさら】に來たりて相い決絶す。
今日斗酒の會,明旦溝水の頭【ほとり】。
御溝の上に??【しょうちょう】すれば,溝水は東西に流る。

淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ??【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。

現代語訳と訳註
(本文)
淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
願得一心人,白頭不相離。
竹竿何嫋嫋,魚尾何徙徙。
男兒重意氣,何用錢刀爲。

(下し文)
淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ徙徙【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。


(現代語訳)
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。


(訳注)
淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
・淒淒 寒く冷ややかなさま。寒く厳しいさま。ぞっとする。ここの「淒淒」は、別れた後の女の心の形容。 
・復 また。ふたたび。その上。
・嫁娶 嫁入り。縁談。結婚。 
・不須 必要はない。もちいず。 
・啼 声に出して泣く。

願得一心人,白頭不相離。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
・願 ねがうことなら。願望「得一心人,白頭不相離」をいう。 ・得:える。 
・一心人 嘘をつかない男性。愛し続けてくれる人。一つ心の人。
・白頭 白髪頭。老齢、老人をいう。 
・不相離 離れてはいかない。離れはしない。 
・相 対象に向かって…てはいか(ない)。「相互に」の意では使われていない。


竹竿何嫋嫋,魚尾何徙徙。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
*『詩經・衛風』『竹竿』「??竹竿,以釣于淇。豈不爾思,遠莫致之。」(??たる竹竿,以って淇に釣る。豈爾を思わざらんや,遠くして之を致す莫し。)に基づく。『詩經・衛風』『竹竿』は、女子は嫁ぐものが道であり、兄弟親子で遊んだ故郷から、離れて行くのが定めであるというもの。
・竹竿 昔仲良く遊んだ釣り竿のこと。 
・何 何と。疑問、感嘆を表す。 
・嫋嫋 しなやかでゆれるさま。
・魚尾 魚。また、魚のシッポ。 
・徙徙 動くさま。ピチピチとしている。


男兒重意氣,何用錢刀爲。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。。
・意氣:心意気。気概。ここでは、真実の愛情の意で使われている。 *後世、唐の魏徴の『述懷』尾聯「人生感意氣,功名誰復論。」と使われている。
・何用 どうして用いるのか。 
・錢刀 ぜに。かね。銭貨。




卓文君
蜀卓氏之先,趙人也,用鐵冶富。秦破趙,遷卓氏。
致之臨,即鐵山鼓鑄,富至僮千人。田池射獵之樂,擬於人君。


『史記・司馬相如列傳』
會梁孝王卒,相如歸,而家貧,無以自業。素與臨令王吉相善,吉曰:『長卿(司馬相如の字)久宦遊不遂,而來過我。』於是相如往,舍都亭。臨令繆爲恭敬,日往朝相如。相如初尚見之,後稱病,使從者謝吉,吉愈益謹肅。臨中多富人,而卓王孫家僮八百人,程鄭亦數百人,二人乃相謂曰:『令有貴客,爲具召之。』并召令。令既至,卓氏客以百數。至日中,謁司馬長卿(司馬相如の字),長卿謝病不能往,臨令不敢嘗食,自往迎相如。相如不得已,彊往,一坐盡傾。酒酣,臨令前奏琴曰:「竊聞長卿(司馬相如の字)好之,願以自娯。」相如辭謝,爲鼓一再行。是時卓王孫有女(卓)文君新寡,好音,故相如繆與令相重,而以琴心挑之。相如之臨,從車騎,雍容濶甚都;及飮卓氏,弄琴,(卓)文君竊從戸窺之,心ス而好之,恐不得當也。既罷,相如乃使人重賜文君侍者通殷勤。文君夜亡奔相如,相如乃與馳歸成都。家居徒四壁立。卓王孫大怒曰:『女至不材,我不忍殺,不分一錢也。』人或謂王孫,王孫終不聽。文君久之不樂,曰:『長卿第倶如臨,從昆弟假貸猶足爲生,何至自苦如此!』相如與倶之臨,盡賣其車騎,買一酒舍酒,而令文君當鑪。相如身自著犢鼻褌,與保庸雜作,滌器於市中。卓王孫聞而恥之,爲杜門不出。昆弟諸公更謂王孫曰:『有一男兩女,所不足者非財也。今文君已失身於司馬長卿,長卿故倦游,雖貧,其人材足依也,且又令客,獨奈何相辱如此!』卓王孫不得已,分予文君僮百人,錢百萬,及其嫁時衣被財物。文君乃與相如歸成都,買田宅,爲富人。