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■ 杜甫 李白を詠う


 57夢李白二首




G乾元2年759年48歳五言古詩
 57夢李白二首
1031
死別已?聲,生別常惻惻。江南瘴癘地,逐客無消息。
故人入我夢,明我長相憶。恐非平生魂,路遠不可測。
魂來楓林青,魂返關塞K。君今在羅網,何以有羽翼?
落月滿屋?,猶疑照顏色。水深波浪闊,無使蛟龍得。

H乾元2年759年48歳五言古詩
浮雲終日行,遊子久不至。三夜頻夢君,情親見君意。
告歸常局促,苦道來不易。江湖多風波,舟楫恐失墜。
出門?白首,若負平生誌。冠蓋滿京華,斯人獨憔悴。
孰雲網恢恢,將老身反累。千秋萬?名,寂寞身後事。

夢李白二首 其一 <230-#1>杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1118 杜甫特集700- 337



華州から秦州への旅の途中、杜甫は李白の夢を三晩もつづけて李白の夢を見た。それで、李白は死んでしまって魂魄が飛んできて夢に現われたのではないかと疑ったのだ。夢の中で李白は「もう帰る」といいながら落ち着きがなく、「来たること易からず 江湖 風波多し 舟楫 恐らくは失墜せん」と不吉なことを言うのである。
 夢の中の李白に、いつもの傲然としたところがなく、しょぼい白髪頭を掻いている。「まさかとは思うが、あなたほどの人が老境になって罰せられ、死後に名を残すようなことになるのだろうか」と、杜甫は李白の死を心配している。
759年乾元二年7月48歳秦州に向かう道中で書いたもの。


夢李白  二首 其一    杜甫
李白を夢で見る。
#1
死別已?聲、 生別常惻惻。  
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
江南瘴癘地、 逐客無消息。』
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
故人入我夢、 明我長相憶。
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
恐非平生魂、 路遠不可測。」
さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。
#2
魂來楓林青、 魂返關塞K。』
君今在羅網、 何以有羽翼。
落月滿屋?、 猶疑照顏色。
水深波浪闊、 無使蛟龍得。』

#1
死別 已に聲を?むも、生別 常に惻惻たり。
江南は瘴癘【しょうれい】の地、逐客【ちくかく】消息無し。
故人【こじん】我が夢に入り、我が長く相憶うを明らかにす。
恐らくは平生【へいぜい】の魂に非じ、路遠くして測る可からず。
#2
魂 來たるとき 楓林【ふうりん】青く、魂返るとき 關塞【かんさい】Kし。
君は今 羅網【らもう】に在り、何を以て 羽翼【うよく】有るや。
落月 屋?【おくりょう】に滿つ、猶 疑う顏色を照らすかと。
水深くして波浪【はろう】闊【ひろ】し、蚊竜【こうりょう】をして得しむること無れ。』


現代語訳と訳註
(本文)夢李白  二首 其一  #1
死別已?聲、 生別常惻惻。  
江南瘴癘地、 逐客無消息。』
故人入我夢、 明我長相憶。
恐非平生魂、 路遠不可測。」


(下し文) #1
死別 已に聲を?むも、生別 常に惻惻たり。
江南は瘴癘【しょうれい】の地、逐客【ちくかく】消息無し。
故人【こじん】我が夢に入り、我が長く相憶うを明らかにす。
恐らくは平生【へいぜい】の魂に非じ、路遠くして測る可からず。


(現代語訳)
李白を夢で見る。
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。


(訳注)#1
夢李白
李白を夢で見る。
 杜甫と李白は745年魯郡の石門山で別れて以来、会っていない。その李白が安史の乱・永王李?の水軍に入り、て生死不明と聞き、杜甫は李白の夢を見たことで、この詩を作った。李白の情報は、757年2月永王?敗れ、李白彭澤に逃げ、秋に長安・洛陽、奪回、李白が捕えられ、粛宗、玄宗長安に帰る。李白は潯陽の獄に捕えられる。758年李白は死罪という情報を杜甫は華州で知る。杜甫が華州から秦州へ旅立つ758年7月段階では、いつ処刑されるかわからないが、おそらく近々施されるという段階であった。
758年8月、死罪を言い渡される直前に長安奪還の功労者郭子儀の助言で、夜郎に流刑となった。しかしこの詩の段階では知る由もない。


死別已?聲、生別常惻惻。  
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
○死別己春声 此の句については諸説があるが、@死別は745年李白と魯郡の石門山で別れて別れたとき死別だとおもった、己とは往時をさす語である。Aおよそ死別というものは哀しいもの、生別れもそれに劣らず常に忘れることなく心を痛めるもの。というものである。Bここでは死刑宣告を受けたものとして夢に出ている。杜甫自身、官僚になったものの、天子の良き助言者となり得なく夢破れている。李白も朝廷を追われ、永王?軍に於けるという軍師としての夢が破れている。互いに将来に対する希望がないという意味で捉えることである。○生別 現在なお存在して別離していることをいう。○側側 心のいたむさま。


江南瘴癘地、逐客無消息。
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
○江南 長江の下流域の南、宜城、秋浦、天台山、会稽、白の居た地。○瘴癘 わるい水蒸気。マラリアの発症率が高い湿気の多い所。当時は、蚊が媒体するのではなく毒ガスがマラリアの病原と考えられていた。○逐客 朝廷からおいだされたもの、李白をさす、李白は永王?の挙兵に関係した罪により759年8月乾元2年に夜郎に流され、二年に途中より赦されてもどった。詩は赦されたことをしらない、以前のもののため逐客という。○消息 たより。


故人入我夢、 明我長相憶。
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
○故人 ふるなじみ。李白をさす。○明 李白が明らかに知ること、句意は明知しているために夢にあらわれたというのである。○長相憶 いつまでも思う。


恐非平生魂、 路遠不可測。」
さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。
○平生魂 ふだんのたましい、ふだんとは在世のことをいう。○不可測 なぜ遠路を来たのかそのわけがはかり知られぬ。

夢李白  二首 其一    杜甫
李白を夢で見る。
#1
死別已?聲、 生別常惻惻。  
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
江南瘴癘地、 逐客無消息。』
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
故人入我夢、 明我長相憶。
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
恐非平生魂、 路遠不可測。」
さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。


#2
魂來楓林青、 魂返關塞K。』
李白の魂は楓林の青くぼんやりとしたところからここへとやって来たのであろう。こんどは魂が帰っていくのは関所や塞の夜の黒闇に向かっていったのである。
君今在羅網、 何以有羽翼。
君は今、罪人で網檻のなかにはいっているはずではないか、どうして羽の翼があってここへとんでくることができたのだろうが、(もしかしたら処刑されたのだろうか。)』
落月滿屋?、 猶疑照顏色。
わたしは寝室で横になったまま明け方落ちかかる満月の光が梁の木を明るく照らすのを見続ける、その光はまだ李白の顔を照らしているのか疑われるのである。
水深波浪闊、 無使蛟龍得。』
南方江湖の水が深く、波浪を起こし、広くひろがっていくから、蛟竜に良いように為され、それに害せられないようにしないといけないのだ。』



#1
死別 已に聲を?むも、生別 常に惻惻たり。
江南は瘴癘【しょうれい】の地、逐客【ちくかく】消息無し。
故人【こじん】我が夢に入り、我が長く相憶うを明らかにす。
恐らくは平生【へいぜい】の魂に非じ、路遠くして測る可からず。
#2
魂 來たるとき 楓林【ふうりん】青く、魂返るとき 關塞【かんさい】Kし。
君は今 羅網【らもう】に在り、何を以て 羽翼【うよく】有るや。
落月 屋?【おくりょう】に滿つ、猶 疑う顏色を照らすかと。
水深くして波浪【はろう】闊【ひろ】し、蚊竜【こうりょう】をして得しむること無れ。』



現代語訳と訳註
(本文) #2
魂來楓林青、 魂返關塞K。』
君今在羅網、 何以有羽翼。
落月滿屋?、 猶疑照顏色。
水深波浪闊、 無使蛟龍得。』


(下し文) #2
魂 來たるとき 楓林【ふうりん】青く、魂返るとき 關塞【かんさい】Kし。
君は今 羅網【らもう】に在り、何を以て 羽翼【うよく】有るや。
落月 屋?【おくりょう】に滿つ、猶 疑う顏色を照らすかと。
水深くして波浪【はろう】闊【ひろ】し、蚊竜【こうりょう】をして得しむること無れ。』


(現代語訳)
李白の魂は楓林の青くぼんやりとしたところからここへとやって来たのであろう。こんどは魂が帰っていくのは関所や塞の夜の黒闇に向かっていったのである。
君は今、罪人で網檻のなかにはいっているはずではないか、どうして羽の翼があってここへとんでくることができたのだろうが、(もしかしたら処刑されたのだろうか。)』
わたしは寝室で横になったまま明け方落ちかかる満月の光が梁の木を明るく照らすのを見続ける、その光はまだ李白の顔を照らしているのか疑われるのである。
南方江湖の水が深く、波浪を起こし、広くひろがっていくから、蛟竜に良いように為され、それに害せられないようにしないといけないのだ。』


(訳注)
魂來楓林青、 魂返關塞K。
李白の魂は楓林の青くぼんやりとしたところからここへとやって来たのであろう。こんどは魂が帰っていくのは関所や塞の夜の黒闇に向かっていったのである。
○魂来 李白の魂が杜甫の居る所へくる。○楓林青 楓林は江南の名木、江南地方の物であるが青は夜の霞でぼんやりとはっきり見えない状況をいう遠近法である。○魂返 李白の魂が江南の楓林なのか、獄舎なのかわからないが、かえること言う。○関塞 関所、塞、獄舎など即ち官舎などの物である。○黒 遠近法で暗い闇の状態の中に「関所・塞」がみえないほどのなかにあることをいう、夜の色のこと。は生まれてくる色、初めの色であり、黒は終わりの色、透明の色、亡くなる色として使っている。


君今在羅網、 何以有羽翼。
君は今、罪人で網檻のなかにはいっているはずではないか、どうして羽の翼があってここへとんでくることができたのだろうが、(もしかしたら処刑されたのだろうか。)』
○君今在羅網、何以有羽巽 君は李白をさし、羅網は罪禍のあみのこと監獄、罪人は鳥が網の中へ入れられているように拘束されている。自分の夢に出てきたということは、もしかして処刑されて、魂だけが、ここへ来たのだろうか。
は生まれてくる色、初めの色であり、黒は終わりの色、透明の色、亡くなる色として使っている。


落月滿屋?、 猶疑照顏色。
わたしは寝室で横になったまま明け方落ちかかる満月の光が梁の木を明るく照らすのを見続ける、その光はまだ李白の顔を照らしているのか疑われるのである。
○落月 落ちかかる月の光。○屋梁 やねのはりの木。寝た状態で見るときの表現法である。寝ているのか起きているのかわからない状態をいう写実的な表現法である。○猶疑 猶とは夢のさめたのちまだの意。○顔色 李白のかおつき。


水深波浪闊、 無使蛟龍得。」
南方江湖の水が深く、波浪を起こし、広くひろがっていくから、蛟竜に良いように為され、それに害せられないようにしないといけないのだ。』
○水深 水は南方の江湖の水をいう。〇蛟龍 人を害するみずち。○得 得意、好き勝手にされる、せしめることをいう。


夢李白
 杜甫と李白は745年魯郡の石門山で別れて以来、会っていない。その李白が安史の乱・永王李?の水軍に入り、て生死不明と聞き、杜甫は李白の夢を見たことで、この詩を作った。李白の情報は、757年2月永王?敗れ、李白彭澤に逃げ、秋に長安・洛陽、奪回、李白が捕えられ、粛宗、玄宗長安に帰る。李白は潯陽の獄に捕えられる。758年李白は死罪という情報を杜甫は華州で知る。杜甫が華州から秦州へ旅立つ758年7月段階では、いつ処刑されるかわからないが、おそらく近々施されるという段階であった。
758年8月、死罪を言い渡される直前に長安奪還の功労者郭子儀の助言で、夜郎に流刑となった。しかしこの詩の段階では知る由もない。




夢李白二首 其二 <231-#1>杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1124 杜甫特集700- 339



(李白を夢む その二)
華州から秦州への旅の途中、杜甫は李白の夢を三晩もつづけて李白の夢を見た。それで、李白は死んでしまって魂魄が飛んできて夢に現われたのではないかと疑ったのだ。夢の中で李白は「もう帰る」といいながら落ち着きがなく、「来たること易からず 江湖 風波多し 舟楫 恐らくは失墜せん」と不吉なことを言うのである。
 夢の中の李白に、いつもの傲然としたところがなく、しょぼい白髪頭を掻いている。「まさかとは思うが、あなたほどの人が老境になって罰せられ、死後に名を残すようなことになるのだろうか」と、杜甫は李白の死を心配している。
759年乾元二年7月48歳秦州に向かう道中で書いたもの。


其二
浮雲終日行、遊子久不至。  
空に浮かんでいる雲は一日中動き飛び去って戻らないが、その雲と同じようにわたしがはるかに思う旅人(李白)もなかなかこちらへやってこない。
三夜頻夢君、情親見君意。
ところが近ごろ、三晩続いてしきりと君を夢にみたのだ。それで君の思いがわたしに伝わっていかに親しもうとする意をもっているかが見られるというものだ。」
告歸常局促、苦道來不易。
夢で遭う度にいつも君は「もうかえる」と告げてのびのびしない様子なのだ、それは李白が苦々しく云うにはここへやってくるのは容易ではなかったということなのだ。
江湖多風波、舟楫恐失墜。』
「江南・江湖の地方は風波が多いから、舟や楫があるいはおとされ失われるのではないかと心配する」などというのである。
#2
出門?白首、若負平生志。
冠蓋滿京華、斯人獨憔悴。
孰云網恢恢、將老身反累。
千秋萬?名、寂寞身後事。』


(李白を夢む その二)
浮雲 終日行く、遊子 久しく至らず。
三夜 頻【しき】りに君を夢む、情 親しみ君が意を見る。
歸るを告げて常に局促【きょくそく】たり、苦【ねんごろ】に道【い】う 來るは易からず。
江湖【こうこ】風波多く、舟楫【しゅうしゅう】失墜せんことを恐ると。』
#2
門を出(い)でて白首【はくしゅ】を掻く、平生【へいぜい】の志に負【そむ】くが若【ごと】し。
冠蓋【かんがい】京華【けいか】に満つ、斯【こ】の人 独り  ??【しょうすい】す。
孰【たれ】か云う 網【あみ】恢恢【かいかい】たりと、将【まさ】に老いんとして身【み】)反【かえ)って累【つみ】()せらる。
千秋【せんしゅう】 万歳【ばんざい】の名は、寂寞【せきばく】たる身後【しんご】の事。』


現代語訳と訳註
(本文) 其二
浮雲終日行、遊子久不至。  
三夜頻夢君、情親見君意。
告歸常局促、苦道來不易。
江湖多風波、舟楫恐失墜。」


(下し文)
(李白を夢む その二)
浮雲 終日行く、遊子 久しく至らず。
三夜 頻【しき】りに君を夢む、情 親しみ君が意を見る。
歸るを告げて常に局促【きょくそく】たり、苦【ねんごろ】に道【い】う 來るは易からず。
江湖【こうこ】風波多く、舟楫【しゅうしゅう】失墜せんことを恐ると。」


(現代語訳)
空に浮かんでいる雲は一日中動き飛び去って戻らないが、その雲と同じようにわたしがはるかに思う旅人(李白)もなかなかこちらへやってこない。
ところが近ごろ、三晩続いてしきりと君を夢にみたのだ。それで君の思いがわたしに伝わっていかに親しもうとする意をもっているかが見られるというものだ。」
夢で遭う度にいつも君は「もうかえる」と告げてのびのびしない様子なのだ、それは李白が苦々しく云うにはここへやってくるのは容易ではなかったということなのだ。
「江南・江湖の地方は風波が多いから、舟や楫があるいはおとされ失われるのではないかと心配する」などというのである。


(訳注) 其二
浮雲終日行、遊子久不至。  
空に浮かんでいる雲は一日中動き飛び去って戻らないが、その雲と同じようにわたしがはるかに思う旅人(李白)もなかなかこちらへやってこない。
○終日行一日中うごき去る、遊子のかえらぬことの比喩。○遊子 旅人、李白をさす。○至 自己の居る処へくる。


三夜頻夢君、情親見君意。
ところが近ごろ、三晩続いてしきりと君を夢にみたのだ。それで君の思いがわたしに伝わっていかに親しもうとする意をもっているかが見られるというものだ。」
○情親 心のしたしいこと。○君意 李白の情親しむの意。情親見君意とは見二君情親恵一というのにおなじ。○告帰 李白がもはや商へかえるべきことを作者につげる。


告歸常局促、苦道來不易。
夢で遭う度にいつも君は「もうかえる」と告げてのびのびしない様子なのだ、それは李白が苦々しく云うにはここへやってくるのは容易ではなかったということなのだ。
○常 三夜ともいつも。○局促 心ののびのびせぬ様子。○苦道 李白が苦々しく云う。容疑の事実に不満足であること。○来不易 ここへくることは容易でなかった。


江湖多風波、舟楫恐失墜。』
「江南・江湖の地方は風波が多いから、舟や楫があるいはおとされ失われるのではないかと心配する」などというのである。
○江湖二句 李白の言とする。



夢李白二首 其二 <231-#2>杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1127 杜甫特集700- 340


(李白を夢む その二)
華州から秦州への旅の途中、杜甫は李白の夢を三晩もつづけて李白の夢を見た。それで、李白は死んでしまって魂魄が飛んできて夢に現われたのではないかと疑ったのだ。夢の中で李白は「もう帰る」といいながら落ち着きがなく、「来たること易からず 江湖 風波多し 舟楫 恐らくは失墜せん」と不吉なことを言うのである。
 夢の中の李白に、いつもの傲然としたところがなく、しょぼい白髪頭を掻いている。「まさかとは思うが、あなたほどの人が老境になって罰せられ、死後に名を残すようなことになるのだろうか」と、杜甫は李白の死を心配している。
759年乾元二年7月48歳秦州に向かう道中で書いたもの。


其二
浮雲終日行、遊子久不至。  
空に浮かんでいる雲は一日中動き飛び去って戻らないが、その雲と同じようにわたしがはるかに思う旅人(李白)もなかなかこちらへやってこない。
三夜頻夢君、情親見君意。
ところが近ごろ、三晩続いてしきりと君を夢にみたのだ。それで君の思いがわたしに伝わっていかに親しもうとする意をもっているかが見られるというものだ。」
告歸常局促、苦道來不易。
夢で遭う度にいつも君は「もうかえる」と告げてのびのびしない様子なのだ、それは李白が苦々しく云うにはここへやってくるのは容易ではなかったということなのだ。
江湖多風波、舟楫恐失墜。』
「江南・江湖の地方は風波が多いから、舟や楫があるいはおとされ失われるのではないかと心配する」などというのである。
#2
出門?白首、若負平生志。
夢の中で君が我が家の門から出て白髪頭をかいているのであるが、それを見ると君が平生から思っている志を為しとげられず、それに負けたとかんがえているかのようである。
冠蓋滿京華、斯人獨憔悴。
都には冠蓋をつけた富貴の人々がたくさんいるのだが、この李白のような男だけが一人やつれて浮ばずにいるのである。
孰云網恢恢、將老身反累。
古人が言う、天の網はひろくて大きく、網目も小さいというが、その天の網で李白を掬ってくれ、そうしてくれれば老人の身にとって禍を避けるということになるから。
千秋萬?名、寂寞身後事。』
(あれだけの大詩人であって)永遠不朽の名などいうものは生きている時には望んでいるのではない、ただそれは寂寞たる死後、いわれる事である。(今は天が救ってくれ。)』


(李白を夢む その二)
浮雲 終日行く、遊子 久しく至らず。
三夜 頻【しき】りに君を夢む、情 親しみ君が意を見る。
歸るを告げて常に局促【きょくそく】たり、苦【ねんごろ】に道【い】う 來るは易からず。
江湖【こうこ】風波多く、舟楫【しゅうしゅう】失墜せんことを恐ると。』
#2
門を出(い)でて白首【はくしゅ】を掻く、平生【へいぜい】の志に負【そむ】くが若【ごと】し。
冠蓋【かんがい】京華【けいか】に満つ、斯【こ】の人 独り  ??【しょうすい】す。
孰【たれ】か云う 網【あみ】恢恢【かいかい】たりと、将【まさ】に老いんとして身【み】)反【かえ)って累【つみ】()せらる。
千秋【せんしゅう】 万歳【ばんざい】の名は、寂寞【せきばく】たる身後【しんご】の事。』



現代語訳と訳註
(本文) #2
出門?白首、若負平生志。
冠蓋滿京華、斯人獨憔悴。
孰云網恢恢、將老身反累。
千秋萬?名、寂寞身後事。』


(下し文) #2
門を出(い)でて白首【はくしゅ】を掻く、平生【へいぜい】の志に負【そむ】くが若【ごと】し。
冠蓋【かんがい】京華【けいか】に満つ、斯【こ】の人 独り  ??【しょうすい】す。
孰【たれ】か云う 網【あみ】恢恢【かいかい】たりと、将【まさ】に老いんとして身【み】)反【かえ)って累【つみ】()せらる。
千秋【せんしゅう】 万歳【ばんざい】の名は、寂寞【せきばく】たる身後【しんご】の事。』


(現代語訳)
夢の中で君が我が家の門から出て白髪頭をかいているのであるが、それを見ると君が平生から思っている志を為しとげられず、それに負けたとかんがえているかのようである。
都には冠蓋をつけた富貴の人々がたくさんいるのだが、この李白のような男だけが一人やつれて浮ばずにいるのである。
古人が言う、天の網はひろくて大きく、網目も小さいというが、その天の網で李白を掬ってくれ、そうしてくれれば老人の身にとって禍を避けるということになるから。
(あれだけの大詩人であって)永遠不朽の名などいうものは生きている時には望んでいるのではない、ただそれは寂寞たる死後、いわれる事である。(今は天が救ってくれ。)』


(訳注)
出門?白首、若負平生志。
夢の中で君が我が家の門から出て白髪頭をかいているのであるが、それを見ると君が平生から思っている志を為しとげられず、それに負けたとかんがえているかのようである。
○出門二句 上旬は李白のさま、下旬は作者がそれをながめてくだした語、出門・掻首は共に李白がする動作。○平生志 李白の平生の志。


冠蓋滿京華、斯人獨憔悴。
都には冠蓋をつけた富貴の人々がたくさんいるのだが、この李白のような男だけが一人やつれて浮ばずにいるのである。
○冠蓋 かんむり、車のおおい。高官が用いたものなので貴族の人をさす。○京華 都のはなやかな地、都をさす。○斯入 日をさす。○憔悴 やつれる。


孰云網恢恢、將老身反累。
古人が言う、天の網はひろくて大きく、網目も小さいというが、その天の網で李白を掬ってくれ、そうしてくれれば老人の身にとって禍を避けるということになるから。
○網恢恢 『老子、七十三章』「天網恢恢、疎而不失」(天網恢恢、疎にして漏らさず」、恢恢は大なるさま、天網は目があらいようだが、悪人を漏らさず捕らえる。天道は厳正で悪事をはたらいた者には必ずその報いがある。ここの詩の網は好運のあみをいぅ。○老 李白が老いること。○身 李白の身。○累 煩いをうける。


千秋萬?名、寂寞身後事。」
(あれだけの大詩人であって)永遠不朽の名などいうものは生きている時には望んでいるのではない、ただそれは寂寞たる死後、いわれる事である。(今は天が救ってくれ。)』
○千秋万歳名 永遠不朽の名。○寂寞 孤独でいることのさびしいさま。


(李白を夢む その二)
浮雲 終日行く、遊子 久しく至らず。
三夜 頻【しき】りに君を夢む、情 親しみ君が意を見る。
歸るを告げて常に局促【きょくそく】たり、苦【ねんごろ】に道【い】う 來るは易からず。
江湖【こうこ】風波多く、舟楫【しゅうしゅう】失墜せんことを恐ると。」
門を出(い)でて白首【はくしゅ】を掻く、平生【へいぜい】の志に負【そむ】くが若【ごと】し。
冠蓋【かんがい】京華【けいか】に満つ、斯【こ】の人 独り  ??【しょうすい】す。
孰【たれ】か云う 網【あみ】恢恢【かいかい】たりと、将【まさ】に老いんとして身【み】)反【かえ)って累【つみ】()せらる。
千秋【せんしゅう】 万歳【ばんざい】の名は、寂寞【せきばく】たる身後【しんご】の事。




浮雲は終日流れてくるのに、あなたとはなかなか会えない、三夜にかけてあなたの夢を見ました、そのなかであなたの暖かい志に接することが出来ました
でもあなたは急いで帰らねばならぬという、またここへやってくるのは大変だったともいった、途中江湖には風波が立って、船が沈没しそうになったと


 李白は13年前、長安を追われた自分を逐客と称していた。杜甫は李白の夢を見て、自分の憶いが李白に通じたと喜ぶのだが、夢の中の李白の様子がいつもと違っている。

 杜甫は李白が永王の軍に参加して捕らわれ、獄舎に入れられ、資材の可能性があるとは聞いていた。李白の魂魄が夢の中に現われたのである。それを考え眠れずにいて、落ちた月の光に照らされた梁の光が反射したように、李白の顔が蒼白かった。それで、李白が不運な目に会って命を落とすのではないかと杜甫は心配でならなかったのだ。

 杜甫は三晩もつづけて李白の夢を見た。李白は死んでしまって魂魄が飛んできて夢に現われたのではないかと疑った。もう帰るといいながら落ち着きがなく、「来たること易からず 江湖 風波多し 舟楫 恐らくは失墜せん」と不吉なことを言うのである。

 夢の中の李白には、いつもの謫仙人の傲然としたところがないのである。しょぼしょぼと白髪頭を掻いているのだ。まさかとは思うが、あれほどの人が老境になって罰せられ、死後に名を残すようなことになるのだろうかと、杜甫は李白の死を心配した。杜甫は暗く愁いに満ちた気持ちを胸に、秦州への旅をつづけたのだ。 


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