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杜甫 李白を詠う
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李白杜甫を詠う
行路難 三首  李白
魯郡東石門送杜二甫
沙邱城下寄杜甫

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■ 杜甫 李白を詠う


279 遣懐 


「遣懐」は、「宋中」(宋州)で遊んだことを詠います。
12  遣懐(昔我遊宋中) 杜甫  懐を遣る  
昔我遊宋中、惟梁孝王都。
名今陳留亜、劇則貝魏倶。
邑中九万家、高棟照通衢。
舟車半天下、主客多歓娯。
白刃讎不義、黄金傾有無。
殺人紅塵裏、報答在斯須。

憶与高李輩、論交入酒蘆。
両公壮藻思、得我色敷腴。
気酣登吹台、懐古視平蕪。
芒礑雲一去、雁鶩空相呼。

昔宋州で遊んだことがある
梁の孝王が都としたところだ
名は陳留につぐが
にぎわいは貝州や魏州にひとしい
城内には九万戸の家々
高い棟木が十字の街路につらなっている
舟や車は  天下の半ばを集め
土地の者も旅人も  共に楽しく暮らしている
不義の者は白刃でこらしめ
黄金は有無にかかわらず使いつくす
街上で人を殺せば
すぐに報復を受けるのだ

想えば  李白や高適らと
交わりを結んで酒屋に行った
文学への志操は  共にさかんであるが
私を見出して    くつろぎ喜ぶ様子である
意気揚々と吹台に登り
荒れた野原を見ながら  昔を思う
芒山・礑山の雲気は消え去り
雁や家鴨の  むなしい啼き声が聞こえるだけ

宋中で出会った李白、高適(こうせき)、杜甫の三人は気が合って酒屋に繰り込み、文学を論じます。三人のなかでは杜甫が年少(三十三歳)ですので、李白と高適は若い才能を見出したと喜ぶのです。三人は宋州の「吹台」(孝王の旧苑)に登り、あたりの荒れた平原を見まわしながら、昔のことを思い出します。
 詩中に出てくる「芒?」は芒山と?山のことで、漢の高祖劉邦が若いころ官憲の追求を逃れて身を隠したという伝説の場所です。「芒礑」は宋州の東90kmのところにありますので、吹台からは見えませんが、ここで見ているのは「芒?」から立ち昇ったという劉邦の雲気(天子の生まれる気運)です。三人は劉邦の創業のさまを思って感慨にふけるのでした。しかし、漢の雲気もいまは消え去って、雁や家鴨が啼き交わすだけだと、王朝の衰退を歎きます。唐代の詩で唐を漢や秦に例えるのは通常の手法です。 

三人は秋の終わりから冬のはじめにかけて、孟諸沢で狩りの遊びをしました。

昔  我  宋中(そうちゅう)に遊ぶ
惟(こ)れ梁(りょう)の孝王の都なり
名は今  陳留(ちんりゅう)に亜(つ)ぎ
劇(げき)は則ち貝魏(ばいぎ)に倶(ひと)し
邑中(ゆうちゅう)  九万家(か)
高棟(こうとう)は通衢(つうく)を照らす
主客は歓娯(かんご)多し
舟車(しゅうしゃ)は天下に半(なか)ばし
白刃(はくじん)  不義に讎(あだ)し
黄金(おうごん)  有無(うむ)を傾く
人を紅塵(こうじん)の裏(うち)に殺し
報答(ほうとう)  斯須(ししゅ)に在り

憶(おも)う  高李(こうり)が輩(はい)と
交(こう)を論じて酒?(しゅろ)に入る
両公  藻思(そうし)壮(さか)んなり
我を得て  色(いろ)敷腴(ふゆ)たり
気酣(たけなわ)にして吹台(すいだい)に登り
古(いにしえ)を懐(おも)うて平蕪(へいぶ)を視(み)る
芒礑(ぼうとう)  雲は一去(いちきょ)し
雁鶩(がんぼく)  空(むな)しく相呼ぶ


279「遣懷」杜甫
昔我游宋中,惟梁孝王都。名今陳留亞,劇則貝魏倶。
邑中九萬家,高棟照通衢。舟車半天下,主客多歡娯。
白刃讎不義,黄金傾有無。殺人紅塵裏,報答在斯須。
憶與高李輩,論交入酒蘆。兩公壯藻思,得我色敷腴。
氣酣登吹台,懷古視平蕪。芒礑雲一去,雁鶩空相呼。
先帝正好武,寰海未凋枯。猛將收西域,長戟破林胡。
百萬攻一城,獻捷不雲輸。組練棄如泥,尺土負百夫。
拓境功未已,元和辭大爐。亂離朋友盡,合遂歳月徂。
吾衰將焉托,存歿再嗚呼。蕭條益堪愧,獨在天一隅。
乘黄已去矣,凡馬徒區區。不復見顏鮑,系舟臥荊巫。
臨餐吐更食,常恐違撫孤。


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