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  杜甫
 秦州の詩

84 秦州雑詩二十首

461 秦州雑詩二十首 (家族と安住の地を求めて)
乾元2年759年48歳
 「秦州雑詩二十首」は五言律詩の二十首に亘る連作で、官を辞して、家族全員で定住地を捜し求めて旅に出ました。まず、秦州にとどまります。そこで詠った有名な作品です。
「秦州雑詩」二十首は、四首ずつの五部構成になっています。この時期お関心事は叛乱・戦火の行方です。杜甫は、戦のない平安なところで、家族と生活できることを願っています。叛乱の戦火は当方から始まっており、西方に行くほど反乱軍の影響のない戦火に塗れていない平穏なところとされており、避難民は多かったのではないでしょうか。
詩は、戦争に関するもの、「人によりて、遠遊をなす」と知人を訪ねて安住を探す境地、などその時代をよく表した作品になっています。


 秦州へ向かう杜甫の一行は、妻が杜甫より十歳下の三十八歳、長女は十三歳、長男宗文は十歳、次男宗武は七歳、次女は五歳であった。これに異母弟の杜占が加わって総勢は七人です。ほかに使用人として従僕が二、三人を考えると、十人の大移動だったのです。当時の士族の逃避行は、馬に乗った主人と、家財を載せた車に小さな子供を同乗させ、途中の食事も作ったりするので大荷物の旅は当たり前のことでした。

杜甫124 秦州雑詩二十首 其一(満目悲生事)
秦州雑詩二十首 其一
(第一首は秦州に到着する様子を詠った序章のようである。)

満目悲生事、因人作遠遊。
遅廻度隴怯、浩蕩及関愁。
水落魚龍夜、山空鳥鼠秋。
西征問烽火、心折此淹留。

誰が見たって生きていくことがは悲しいことばかりになっているから、人を頼って(戦争のない)遠方へ旅をすることになる。
道越えが遅くなったのは隴山を越えるときに怯えながら通ったからだ。大きな気もちになってこの辺鄙な峠についたけど不安な気持ちでいっぱいだ
少し下ってきて水かさの減った魚竜川で夜になった、山の人のいない烏鼠洞穴山はすっかり秋だ。
西に旅して行く手に(更に西方)に戦争がないかと聞いた、(西のほうも危ない)心がくじけてこの地(秦州)に留まることにしよう。

解釈
自分は今、悲しいことには目にふれるもの皆自己の生活に都合の悪い事ばかりであって、他人の力に頼ってこんな遠方へ旅をするのである。進みて朧坂の険路を通るときは道もはかどらず心か、怯えることであり、想像してみるとこれから先辺境の関所のあるところまで行くのだと思うと気心もぱっとして締りなく愁えをもようされるのである。魚竜川のあたりの夜には水嵩の減っているのが目立ち、鳥鼠山の秋は何人も居らぬ寂しさが想像される。西方に逃避行して前路に蜂火の有るか無いかを聞いてみると蜂火は有るのであって、それがため前進の心もくじけてしまい、ここの秦州で滞在するのである。

語註
○秦州 陝西省鞏昌府秦州。杜甫寓居の地。 ○雄詩 寅居中の種種のことについて詠った詩をひとまとめにして雑詩という。 ○生事 生活上の事、この句は生活の意の如くならぬことをさしていう。 ○因人 他人のカによる。これはその誰なるか不明であるが、秦州において杜甫を世話するから来いといってくれた人があったのであろう。 ○遠遊 華州の方からなので秦州までは道が遠い。 ○遅廻 道の捗らぬさま。 〇度隴怯 度は経過すること、朧は朧?・朧坂のこと(つづら折りの坂)、陝西省鳳翔府朧州の西北六十里にある大きな坂地である。○浩蕩 大きなさま、心の散漫なさまをいうのであろう。 ○及関 関は或は一般に辺地の関をさすとし、或は特に朧山の下の関をさすとする。前説が可なるに似るが、前説をとるときは「及」は「及ばんとする」ということで、将来にかかる語となるであろう。 ○水落 落は水量が減じて低落すること。○魚竜 川の名、折水のこと、隣州の南にあり、東南流して洞水に入る、これは自己のすでに経過した地についていう。○山空 空とは人の居らぬことをいう。○鳥鼠 山の名、鳥鼠同穴山ともいう、甘粛省蘭州渭源県の西にある、これは未踏の地を想像してのべたもの。魚竜の旬は度朧の句を承け、鳥鼠の句は及関の句を承けるとみるべきである。○西征 征はゆくこと、征伐の意ではない。大人数で移動する際のさま。 ○問う煙火 煙火は兵乱の急を告げるもの、問とはその有無を問うこと、当時陳西にわたって吐蕃の乱があった。 ○心折 心がくじけおれること。○此 秦州をさす。○淹留 ひさしくとどまる。

満目 生事を悲しむ、人に因(よ)りて遠遊を作(な)す
遅廻(ちかい) 隴(ろう)を度(わた)りて怯(おび)え、浩蕩(こうとう)関(かん)に及んで愁う
水は落つ 魚龍の夜、山は空し 鳥鼠(ちょうそ)の秋
西征(せいせい)して烽火(ほうか)を問い、心(こころ)折(くだ)けて此(ここ)に淹留(えんりゅう)す




461秦州雜詩二十首
1
滿目悲生事,因人作遠遊。遲回度隴怯,浩蕩及關愁。
水落魚龍夜,山空鳥鼠秋。西?問烽火,心折此淹留。
秦州雜詩二十首 其一 杜甫第1部 <254> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1211 杜甫詩 700- 368

2
秦州城北寺,勝跡隗囂宮。苔蘚山門古,丹青野殿空。
月明垂葉露,雲逐渡溪風。清渭無情極,愁時獨向東。
秦州雜詩二十首 其二 杜甫第1部 <255> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1214 杜甫詩 700- 369
3
州圖領同穀,驛道出流沙。降虜兼千帳,居人有萬家。
馬驕朱汗落,胡舞白題斜。年少臨?子,西來亦自誇。
秦州雜詩二十首 其三 杜甫第1部 <256> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1217 杜甫詩 700- 370
4
鼓角?邊郡,川原欲夜時。秋聽殷地發,風散入雲悲。
抱葉寒?靜,歸山獨鳥遲。萬方同一概,吾道竟何之!
秦州雜詩二十首 其四 杜甫第1部 <257> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1220 杜甫詩 700- 371
5南使宜天馬,由來萬匹強。浮雲連陣沒,秋草遍山長。
聞?真龍種,仍殘老??。哀鳴思戰鬥,迥立向蒼蒼。
秦州雜詩二十首 其五 杜甫第2部 <258> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1223 杜甫詩 700- 372
6
城上胡笳奏,山邊漢節歸。防河赴滄海,奉詔發金微。
士苦形骸K,林疏鳥獸稀。那堪往來戍,恨解?城圍。
秦州雜詩二十首 其六 杜甫第2部 <259> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1226 杜甫詩 700- 373
7莽莽萬重山,孤城山谷間。無風雲出塞,不夜月臨關。
屬國歸何??樓蘭斬未還。煙塵一長望,衰颯正摧顏。
秦州雜詩二十首 其七 杜甫第2部 <260> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1229 杜甫詩 700- 374
8
聞道尋源使,從天此路回。牽牛去幾許,宛馬至今來。
一望幽燕隔,何時郡國開。東?健兒盡,羌笛暮吹哀。
秦州雜詩二十首 其八 杜甫第2部 <261> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1232 杜甫詩 700- 375
9
今日明人眼,臨池好驛亭。叢篁低地碧,高柳半天青。
稠疊多幽事,喧呼?使星。老夫如有此,不異在郊?。
秦州雜詩二十首 其九 杜甫第3部 <262> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1235 杜甫詩 700- 376
10
雲氣接昆侖,??塞雨繁。羌童看渭水,使節向河源。
煙火軍中幕,牛羊嶺上村。所居秋草靜,正閉小蓬門。
秦州雜詩二十首 其十 杜甫第3部 <263> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1238 杜甫詩 700- 377
11
蕭蕭古塞冷,漠漠秋雲低。?鵠翅垂雨,蒼鷹饑啄泥。
薊門誰自北,漢將獨?西。不意書生耳,臨衰厭鼓?。
秦州雜詩二十首 其十一 杜甫第3部 <264> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1241 杜甫詩 700- 378
12
山頭南郭寺,水號北流泉。老樹空庭得,清渠一邑傳。
秋花危石底,?景臥鐘邊。俯仰悲身世,溪風為颯然。
秦州雜詩二十首 其十二 杜甫第3部 <265> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1244 杜甫詩 700- 379
13
傳道東柯谷,深藏數十家。對門藤蓋瓦,映竹水穿沙。
?地翻宜粟,陽坡可種瓜。船人近相報,但恐失桃花。
秦州雜詩二十首 其十三 杜甫第4部 <266> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1247 杜甫詩 700- 380
14
萬古仇池穴,潛通小有天。神魚今不見,福地語真傳。
近接西南境,長懷十九泉。何當一茅屋,送老白雲邊。
秦州雜詩二十首 其十四 杜甫第4部 <267> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1250 杜甫詩 700- 381
15
未暇泛蒼海,悠悠兵馬間。塞門風落木,客舍雨連山。
阮籍行多興,?公隱不還。東柯遂疏懶,休鑷鬢毛斑。
秦州雜詩二十首 其十五 杜甫第4部 <268> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1253 杜甫詩 700- 382
16
東柯好崖谷,不與?峰群。落日邀雙鳥,晴天卷片雲。
野人矜險?,水竹會平分。采藥吾將老,兒童未遣聞。
秦州雜詩二十首 其十六 杜甫第4部 <269> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1256 杜甫詩 700- 383
17
邊秋陰易久,不複辨晨光。簷雨亂淋幔,山雲低度牆。
?? 窺淺井,蚯蚓上深堂。車馬何蕭索,門前百草長。
秦州雜詩二十首 其十七 杜甫第5部 <270> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1259 杜甫詩 700- 384
18
地僻秋將盡,山高客未歸。塞雲多斷績,邊日少光輝。
警急烽常報,傳聞檄?飛。西戎外甥國,何得?天威。
秦州雜詩二十首 其十八 杜甫第5部 <271> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1262 杜甫詩 700- 385
19
鳳林戈未息,魚海路常難。候火雲峰峻,懸軍幕井幹。
風連西極動,月過北庭寒。故老思飛將,何時議築壇?
秦州雜詩二十首 其十九 杜甫第5部 <272> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1265 杜甫詩 700- 386
20
唐堯真自聖,野老複何知。?藥能無婦?應門亦有兒。
藏書聞禹穴,讀記憶仇池。為報鴛行舊,鷦鷯寄一枝。
秦州雜詩二十首 其二十 と<解説とまとめ>杜甫第5部 <273> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1268 杜甫詩 700- 387



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