高適の詩(盛唐)
219 高適 こうせき 702頃〜765
旅の空、一人迎える大みそかの夜。
詩人を孤独が襲います。
除夜作
旅寒燈獨不眠,客心何事轉悽然。
故ク今夜思千里,霜鬢明朝又一年。
寒々とした旅館のともしびのもと、一人過ごす眠れぬ除夜をすごす。ああ、本当にさみしい。
旅の寂しさは愈々増すばかり・・・・・・・・・・。
今夜は大晦日。
故郷の家族は、遠く旅に出ている私のことを思ってくれているだろう。
夜が明けると白髪頭の置いたこの身に、また一つ歳を重ねるのか・・・・。
作者 高適は河南省開封市に祀られています。三賢祠と呼ばれるその杜は李白、杜甫、高適の三詩人が共に旅をした場所である。記念して建立されている。
詩人高適は50歳で初めて詩に志し、たちまち大詩人の名声を得て、1篇を吟ずるごとに好事家の伝えるところとなった。吐蕃との戦いに従事したので辺塞詩も多く残されている。詩風は「高古豪壮」とされる。李林甫に忌まれて蜀に左遷されて?州を通ったときに李白・杜甫と会い、詩の味わいが高まった。
李林甫に捧げた詩も残されており、「好んで天下の治乱を談ずれども、事において切ならず」と評された。『高常侍集』8巻がある。
霜鬢明朝又一年。
ああ、大晦日の夜が過ぎると、また一つ年を取ってしまう。年々頭の白髪も増えていく、白髪の数と同じだけ愁いが増えてゆくのか
当時、「数え」で歳をけいさんしますから、新年を迎えると年を取ります。
旅寒燈獨不眠,客心何事轉悽然。
故ク今夜思千里,霜鬢明朝又一年。
旅先で一人過ごす大晦日、故郷にいれば家族そろって団欒し、みんなで酒を酌み交わしていたことでしょう。
:故ク 今夜 千里を 思う
自分が千里離れた故郷を偲ぶのではなく、故郷の家族が自分を思ってくれるだろうという中国人の発想の仕方です。中華思想と同じ発想法で、多くの詩人の詩に表れています。
しかしそれが作者の孤独感を一層引き立て、望郷の念を掻き立てるのです。